スピラの空は、今日も見上げるほどにどこまでも高い。 青く輝いて、私の胸を幸せな気持ちでいっぱいにするんだ。 大好きな色。キミの色だよ。 再び地上を踏みしめて、太陽に、ただいま。 体にしみこんでくるみたいな光の温かさは、まるで微笑みかけてくれるみたいで、異界から戻った私に 「お帰り。」 って、そう言ってくれているみたいに感じたんだ。 やっぱり私、とことんスピラが好きみたい。 こんな時キミは、何と言って一緒に笑ってくれるかな。 歌に乗せて、私の心を空へ捧げたんだ。 異界の底では、悲しみに凍てついた魂を溶かし、心の闇を照らすことができたよ。 キミに、良く似た面立ちの人だった。 …顔だけだったけどね。 人の想いって…ときどきすごく悲しいね。だけど… 伝えられて良かった。 祈り子様に見送られ、花畑を背に歩き出した。 見上げれば、見えるはずのない天蓋に銀河が渦巻いている。 遥か高みから薄絹のように空を飾るオーロラを潜り抜け、私は地上へと向かったんだ。 真っ暗なトンネルの中を駆けて行く。 地上の光へ近付くたび、心臓が踊り鼓動は早くなる。 祈り子様の問う声が耳について離れない。 迷わず頷いてた。 そう、いつだって思ってた。 キミと一緒に歩きたい。 諦めなくても、いいんだよね? 想いはいつか通じ合う。 伝えようと諦めなければ。 望みを信じていれば。 小さな翼だって力いっぱい羽ばたかせれば。 「ユウナん早く!こっちこっち!」 向こうでリュックが手を振ってる。 一気に駆け抜けた先、眩しい光に思わず目を瞑った。 かざした手を恐る恐る下ろした私の目に、広がる地上の風景が飛び込んできた。まるで何年ぶりかに出会うみたいに、懐かしく新鮮に映る。 新鮮な大気を胸いっぱい吸い込む。空気の味って、こんなに美味しかったんだ。 「何とか終わらせて、また日の目を見られたな。」 「とーぜん!あんな辛気臭い場所、もうこりごりだよ。」 ほっとした表情のパインに、リュックが軽口を叩く。向こうではヌージさんギップルさん、そして自分を取り戻し帰ってきてくれたバラライさん達が笑いあってる。 大切な仲間を失わずにすんで、本当に良かった。 もう、あんな思いをするのはイヤだから。 キミに会えないでいることを、辛いとか悲しいとか、そういう風に思うのは… できるだけ避けてたんだ。 正直言えば、寂しくないって言えば、嘘になる。 それでも、うん…、私は今、幸せです。 眩しい陽の光をこの身いっぱいに浴びる幸せに。 感謝せずにはいられない。 ルブラン達と何か言い合ってたリュックが、ととっと軽やかな足取りで駆けて来た。くるくるとよく動く快活な瞳が覗き込む。 「ユウナん、元気してる?」 エメラルドグリーンの両眼が、睫毛にほんの少し憂いを乗せている。 「うん、最高の気分だよ。」 空に向かって胸を張って答える。自分でも驚くくらい自然に笑えたんだ。リュックの表情も、さっと明るい色を取り戻す。 心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ。 スフィアハントの旅に連れ出してくれて、いつも一緒にいてくれるリュック。本当に感謝してる。 それから、いつの間にか隣に来て、声を立てずに笑ってるもう一人の仲間にも。 「どうやらカラ元気って訳でもなさそうだな。安心したよ。」 クールを装う赤い瞳の奥で、本当はすごく温かい心の持ち主、パイン。冷静沈着に見えてその実、何だかんだとノッてくれる所も大好きだよ。 落ち込んだりなんか…してないよ。これからまた新しい望みを探しに行けるんだから。 同じ空の下に、きっとキミはいる。 手を繋ぎ前を向いて 未来へ一緒に歩ける日が来ると信じてる。 いつかかなう。きっとかなう。 かけがえのない、ただひとつのこと。 だから。 キミに会えたら、こう言います。 たった一言でいいんだ。 「お帰り。」 今日の太陽みたいに。 金色をした天の守護者が、私に微笑みかけてくれたみたいに。 キミに会えたら、いつか聞いて欲しいな。 長い、長い―――キミへの物語。 -FIN- --------------------------------------- STLv.5を終えて地上に戻る時ですね。ユウナの独白で書いてみました。 あまりに半端な長さなので、小説と言い張る気はさらさらありません。ユウナの心情がとにかく書きたくなって、他は一切すっとばしました。(乱暴な) ビサイドEDでユウナが「お帰り」とティーダに微笑むシーンはめっちゃ好きで、彼女のものすごーく色んな感情がごっちゃ混ぜになったアノかわいい笑顔は何度見ても融けそうになります。ここで何とか踏みとどまれても、次の鼻声「ただいま」で融点を簡単に越えて液状になっちゃうんですね。 ここのユウナの台詞に繋がる心情に迫りたい。ただそれだけでこれを書いたみたいです。ははは^^;(をい) |