−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−お互いに毎年やってくるこの日だけは、如何にして相手を驚かせてやろうかと一月前から思案に暮れる。サプライズが必要なのかと問われれば、答えはどう出るものだろう?考えて考えて、いつでも一緒にいる愛すべき人に気がつかれないように用意するプレゼント。驚く顔が見たいから。喜ぶ顔が見たいから。何より、そんな君を見て、自分がとても幸せになれるから。「エゴっぽい」再会してから10回目の、ささやかだけれど幸せな祝いの食卓を眺めながら少しだけ自嘲気味に呟いたのは黄金の髪の青年で、「どうして?」その言葉を掬い取って抱きしめるように微笑んだのは、色違いの瞳を持った彼女だ。一度たりとも祝えるはずはないと思っていた彼女の誕生日をこうして幾度も迎えるたびに、今「此処に在る」幸せをどんなに噛み締めているか、彼女は知っているだろうか?胸に湧き上がる気持ちは、唯一つ。「ユウナ?」「なあに?」呼べば、いつだって答えてくれる。「愛してます」「・・・っ?!な、なあに?!改まって言われると、その、照れちゃうっすよ・・・っ」 俯いた。表情は見えないけれど、途端に赤くなった両の耳がすべてを教えてくれる。「いや、オレって幸せだと思うわけッスよ、お誕生日をお祝するたびにね」「それは、私も同じだよ?」熱くなった頬を両手で覆いながらも反論にでた姫君は、食卓の向こうで不服そうだ。「うん、わかってる。だからね、幸せ者なわけ」「・・・?」唐突な本題を持ち出しても、すべてを語り終えるまで待ってくれる彼女が好きだ。不思議そうな瞳だって可愛らしいことこの上ないし、たおやかな細い指だって魅惑的。 数え上げだしたらキリがなくなる彼女の好きなところは、追々ということにして、今日のこの日に、これだけは。「これからも、どうかユウナを幸せにさせてやってください。オレに。」決意とも、宣誓ともとれる言葉には感謝気持ちが隠れているって、君だったらわかるだろうか?これから先の、長い道。生まれてくれてありがとう。一緒に歩くと決意してくれて、本当にありがとう。「・・・はい。よろしくお願いします」再会してから10回目の、大事な彼女の誕生日。これまでも、これからも。「・・・あのね?えっと、私も、キミに言いたいことがあるんだ」「うん?」その後もたらされた彼女の「お知らせ」に飛び上がらんばかりに喜んだ青年は、隣室で眠る愛息子を叩き起こすことになるのだけれど、そんな小さな幸せがやってくるのは、10ヶ月先のお話。FIN−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−