この記録は、今年のスピラ杯を制したビサイドオーラカのエース、ティーダさんにロングインタビューを行ったときの覚書です。
 インタビュアーとしての私が未熟なせいで内容が今回ブリッツの話題に絞りきれず、優勝記念のインタビューとしては少々的の外れたものとなってしまったきらいがあります。
 けれども永遠のナギ節を授けてくださったユウナ様を守り抜いたガードとしての印象が私にとっては強く、この人物に関する記録はスピラの歴史上有意義なものになると思い、あえてここに書き残すことにしました。



奇跡
dreams come ture  from TIYU_7THEME

(以下、ロングインタビュー内容の抜粋)

 逆転優勝、おめでとうございます!今のお気持ちを一言。
 T/やっぱ最高ッスね。怪我に泣かされたシーズンだったけど、みんな良く頑張ってくれたし。

 ティーダさんはまた奇跡的な記録を打ち立てましたね。
 T/奇跡なんて大げさな。オレはいつも全力で戦うだけッス。

 でも後半3点差からの巻き返しは快挙ですよ。一人で4点はやっぱりすごいです。
 T/逆境なほど燃えるタイプなんで。けどさあ、一人って何スかそれ?(笑)得点は、チームみんなの功績ッスよ。

 今日の試合を振り返っていかがでしたか?
 T/前半出遅れたけど、悲壮感はなかったな。むしろいい意味で緊張できた。後半は、パスまわしが面白いほどばっちり決まったから。そうなれば後は合わせるだけだったし。
 プレスも含めて皆は奇跡、奇跡って騒ぐけどさ、難しく考えることは何にもないんだ。簡単なことッス。

 簡単、ですか?
 T/例えどんなに遠くに思えても、とにかく信じる。諦めさえしなければきっといつかかなうってさ。

(中略)

 奇跡って、信じることからきっと始まるんですね。
 ところで最後はジェクトシュートで決めましたね。ファンの皆も待っていたと思いますよ。最強の技だと思いますが、名前の由来はやはり伝説のガードから?
 T/んー、話せばややこしいんだけど…。ま、一応当たってるよな。

 ティーダシュートは、その内お目見えするでしょうか?
 T/オレはまだまだッスね。面の皮の厚さは、まだまだ・・・には遠く及ばないってことで。

 は?面の皮…ですか?
 T/あーいいのいいの。こっちの話。さらっと流していくッスよ。

 それにしても、本当に見事でした。ブリッツボールの歴史に、また新しい記録が打ち立てられましたね。
 T/大切に思ってる人の笑顔が見られれば、それも驚いて嬉しがってくれたらさ、それって痛快だろ?だからオレはいつだって奇跡を起こしたいと思ってる。どんなに小さな光だって構わないんだ。

 ゴワーズに宣戦布告したデビュー当初から、ティーダさんの自信に満ちた言葉はプレイ同様いつもセンセーショナルですね。
 T/これは自信でも過信でもなくて、確信ッス。ただの思い込みっていう言い方もあるけどな(笑)。

 希望を失わないことが、奇跡を起こす力になる訳ですね。
 T/だから、そんなに難しく考えたことはないんだって。自分で言うのも何なんだけどさ。「大切な人に必要とされている。」って思えるから、それに全力で応えたいんだ。結果は後からついてくるものだし。

 なるほど。ところで大切な人とおっしゃいましたが、具体的には?
 T/いや、それは応援してくれるファンのみんなとか…(ごにょごにょ)

 私達にも馴染み深い、大召喚士様のことを指していたりしますか?
 T/…分かってんなら、聞かないで欲しいッス…―――(少し焦り気味に)あ、ここオフレコで。

 ファンの皆さんに今の気持ちを一言お願いします。
 T/応援してくれた皆、ホントにどうもありがとう。特に中盤からの苦しい戦いは、沢山のファンに支えられたお陰で乗り越えられたようなものだから。

 優勝の喜びを、今一番誰に伝えたいですか?
T/(頭をかきながら苦笑気味に)…シェリンダさん、ちょっと会わないうちに性格変わったんじゃないッスか?

 えー?そんなことありません!職業魂と呼んでくださいよ。ファンの皆さんも、直接ティーダさんの口から聞きたいのではないかと思うんです。
T/(こちらを指差しながら少しオーバーアクション気味に)いや、やっぱり絶対性格変わったって!そんなの聞かれたって、分かりきってるんだからつまんない答えになっちゃうッスよ。(笑)

 そこを敢えてお願いします。優勝の喜びを、まず誰と分かち合いたいですか?
 T/…敢えて正面突破の真っ向勝負!?ディフェンスは苦手なんだよなー。…(やや間を置き、咳払いの後)あーこれ終わったら、もちろんユウナに報告するつもりッス。

 ユウナ様はスタジアムに応援にいらしてたんですか?
 T/あー…どうだったのかな。試合開始時間前には一仕事終えられそうだと言ってたから、もしかしたら来ていたかも。

 ユウナ様も、お忙しい身ですものね。あの、不躾な質問ですみませんけど、ティーダさんはオーラカの看板選手、それからスフィアハンターという二つの顔をお持ちですよね。ものすごくご多忙で両立って難しいと思うんですけど…ユウナ様とブリッツと、どちらを優先するかで悩まれたりすることってあります?
T/(笑いながら)それは質問の根っこが間違ってるッスよ。水と空気、どっちが無くても人間死んじゃうだろ?オレにとっては、生きてくのにどっちも絶対必要だから。

 ユウナ様への想いは、それほど深いんですね。感激しました。
 T/…まずいッス。オレ今まんまと引っかかったわけか。…シェリンダさん、ほんっとリポーター稼業が板についてきたッスね。(笑)

 報告はどのような形で?やっぱりこの後お会いになる予定なんですか?
 T/今日のインタビュアーは手ごわいッス。降参。

 何しろスピラ一のビッグカップルですから、注目度も大きいんですよ。
 T/応援してもらえるのは悪い気がしないんだけど(笑)そっち方面はできればノーコメントってことで。
(少し時間が気になる様子で)ってことで、もうそろそろ勘弁してくんない?

 何だか話題が別のほうに逸れちゃってすみませんでした。最後になりますが、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
 T/月並みないい方になるけど、いつも本当にありがとう。奇跡なんて呼ばれるような勝ち方が出来たのも、スタジアムいっぱいの声援のお陰ッス。
 何とかなる、何とかするって思っていれば、八方ふさがりなように見えてもいつか道が開けるんだ。オレはそう信じてるし、信じてくれたファンの期待に応えられたことが嬉しい。
 ビサイドオーラカは来期も突っ走るんで、また応援よろしく。

(以下、ロングインタビューより)

 終始気さくな笑顔で応じてもらう中、あっという間に取材時間が過ぎました。
 ビサイドオーラカの、いえ、スピラのブリッツを代表するスターとしてご自身を語る言葉の端々に、ユウナ様との固い絆を感じました。

 彼と最初に会ったのは、今から2年と少し前、巡回僧としてスピラ各地を回っていた頃の事です。彼はユウナ様のガードをつとめていました。第一印象は…そうですね。風変わりな格好だな、と。それから人懐っこい笑顔だと思ったのを覚えています。
 第1回マイカ杯が開催されたとき、ルカの港で一騒ぎ起こしたこともあったんだそうですね。もちろん言うだけの実力を備えていたことは、その後次々と塗り替えられたブリッツにおけるレコードの数々が証明しています。

 ああ、でもやっぱり召喚士ユウナ様の傍をいつも守るように立っていた姿が印象に強いです。澄み切った空のような瞳と真っ直ぐな視線が、意志の強さを感じさせました。きっとエボンの教えを絶対だと妄信していた私には見えないものが彼には見えていたんだと思います。

 永遠のナギ節が始まると同時に、彼は行方知れずになったのだそうです。私がユウナ様にお祝いを申し上げようと駆けつけたとき、ルールーさんから、そう教えてもらいました。
 今まで誰も成し得なかった偉業、二度とシンの脅威に怯えないですむ時代の到来。偉大なる大召喚士様が私達に授けてくれた恩恵は計り知れないものがあります。けれども新しいスピラが生まれるために、私達はなんて沢山の別れを経験しなければならなかったのでしょう。
 あの日スタジアムに立ったユウナ様がスピラの人々に語りかけたメッセージは、まるで昨日のことのように鮮明に思い出すことが出来ます。
 耳を傾けたもの全てに生きる勇気を与えてくれたあの言葉は、そのままユウナ様ご自身にも向けたものだったことが、今ならよく分かります。そしてユウナ様が誰の笑顔を思い浮かべながら「お願い」を私達になさったのかも。
 ユウナ様は、このスピラに奇跡をもたらしました。語られることは多くありませんが、本当はユウナ様自身に奇跡をもたらした人物がいたことを、私は知っています。

 彼の起こす奇跡はいつでも明快です。相手がブリッツボールだろうとシンだろうと…恐らくどんなに過酷な運命の前でさえも彼のスタンスは変わらないでしょう。不謹慎な言い方かもしれませんけど、私、そんな風に思います。

 かけがえのない愛しい人に、いつでも温かく迎えてくれる仲間たちに、最高の笑顔を贈ること。

 もしかしたら、いえ、きっと。
 ティーダさんが現れ、ユウナ様と出会ったこと自体がスピラにとって大いなる福音。
 お二人の出会いこそが素晴らしい奇跡だったように思えてなりません。

   -FIN-


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他所様と違った視点で、と生意気に書き始めたものの…
ティユウって言い張るには、めっちゃ無理があるような気がする。

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